<English is the below>

※この事業は、(公財)兵庫県国際交流協会の民間国際交流事業助成制度による助成を受けて実施しています

【紹介】北海道浦河町でワーキングホリデーに参加された方に感想をうかがいました(2024年3月25日更新)

 北海道浦河町でワーキングホリデーに参加された方に、お話しをうかがうことができました!おふたりともヒンディー語が堪能で、とても優秀で素晴らしい志をお持ちの方でした。

 ・留学ではなく、ワーキングホリデーならではの体験は?

 ・ワーキングホリデー後の変化は?

 ・今後の目的や抱負 など

コメントを頂きましたので、是非お読みください!ラージ・ボリさん髙松夢香さん、ご協力ありがとうございました。

ご報告者

ラージ・ボリさん (兵庫県在住)

 

 今回は日本国内でヒンディー語を使い、インドの方々をサポートするというとても稀有な経験をしました。ヒンディー語を国内で使える機会は時々ありますが、今回の様に今まで外国人を受け入れる土壌がない場所で、私達が日本人と海外の人たちの間の橋渡しになりサポートするという立場は、非常に難しくもあり、素晴らしい経験をさせてもらったと感じます。

 

 今回の滞在中、自身の経験と知識を常々刷新していくことが必要だと痛感しました。ヒンディー語はもちろんのこと、インドのことをあまり知らない人たちに、正しい情報を伝えるための経験や知識を日々積んでいくことが大切です。興味深い話がありました。ある馬牧場主の方が「居酒屋に複数のインド人スタッフを連れて食事に連れていったときに、好きなものを頼んでいいよと伝えると、マルゲリータピザのみ複数枚注文した。インド人はマルゲリータピザが好きなのですか。」と聞いてきました。馬牧場の方にはインドは食生活に禁忌を持つ方が多く、馴染みもない食品を食べようという気持ちにならないのではないか。そのためメニューの中で禁忌には該当せず、かつ知っているメニューがマルゲリータピザだったために、それを注文したのではないかと答えました。

 

 このようなシチュエーションの解説を伝える際は、「インドは~」といった一括りにするようなことができない多様な言語と歴史、文化を持つ地域だからこそ、一段と気をつけて発信していかなければならないと感じました。私たちは日本人とインド人の間に立つため、双方に目を配り、正しい情報を伝えなければなりません。このバランスが非常に難しいですが、その一方でやり甲斐を感じる場でした。

 

---- 

 浦河町に来ているインド人の多くはラージャスターン、もしくはビハールからやってきており、彼らがどこで競走馬の育成調教の技術を学んだのかが非常に気になりました。サウジアラビアに滞在し技術を学び、その後浦河町にやってきたという方はいましたが、全体的な統計を取っていないので分かりませんが、どういう経緯で浦河町にやってきたのかというテーマの研究があっても面白いかもしれません。

 

 また個人的に、インドの各地域の食文化について非常に関心があるため、ラージャスターン出身の女性の方が、僕たちのために作ってもらったラージャスターン料理は非常に嬉しくもあり、美味しかったです。彼女に食生活で困っていることを聞いたところ、sangriと呼ばれる乾燥いんげんが日本では手に入らず、インドから持ち込んだとしても税関で逐一チェックされるのが非常に手間であると言ってたのが印象的でした。

 

----

 異なる文化や背景を持つ人達同士が、支え合い、そして共に暮らしていける場所を増やしていく活動の一端をこれからも担っていきたいと考えています。

 

(写真)ラージ・ボリさん提供。ラージャスターン料理の写真。

ご報告者

髙松夢香さん (東京都在住)

 

  「伝える」とはどういったことなのか改めて、深く考えさせられました。

 以前、授業の課題で「日本の社会制度」をテーマにヒンディー語の作文を書いたことがありましたが、その時とは段違いの難しさであったように感じます。大学の課題では、日本語からそのままヒンディー語の専門用語に置き換えることが許されていたのに対し、今回はさらに易しいヒンディー語で表現する必要がありました。多くの場合、浦河町在住のインド人の方々の母語がヒンディー語ではないためです。表面上の意味だけを拾って言語間で言葉を置き換えるだけでは翻訳・通訳として不十分で、相手に本当の意味で伝えるには、説明しようとしている内容の本質をつかんだうえで、それが双方の文化・慣習・社会において何に対応しているのかを反映させた訳にしなくてはいけないのだと実感させられました。

 

 また今回のワーホリでは、インド人住民の方々、ならびに外国人居住者と日常的に関わっている日本人町民の方々から直接お話を伺う機会が何度かありました。日本で日本語がわからないまま生活を送るということがどういう意味合いを持つのか、反対に日本人の方々が外国人居住者と関わるときにどういった局面で問題に遭遇するのか等々、双方の視点からのお話は大変興味深く、多くの気づきや学びがありました。地方自治体が多文化共生実現に際して直面している問題の構造を、立体的にイメージできるようになったと感じています。

 

----

 ヒンディー語学習へのモチベーションが上がったこと、インド・日本の社会制度や文化に対しての興味・関心が高まったことはもちろんですが、自分自身の人生への向き合い方も変化したように思います。今回のワーキングホリデーでは、多くの方々との出会いに恵まれました。夢を叶えようと新たな挑戦をしている同年代の方からお話を聞いたり、より良い社会を実現しようと現在進行形で問題と格闘していらっしゃる先輩を間近で見たりと、大変励みになりました。まだ人生で何をしたいのか模索中ですが、何事にも熱意を持って真摯に取り組みたいと思います。

 

----

 ヒンディー語の学習や自分の研究に精を出すことに加えて、国内外の社会・文化等に関するさまざまな事象の知識を吸収していきたいです。さらに、ただ漠然と毎日を過ごすのではなく、自分の生きる社会でどういった問題が起きていて、それを解決するためにはどうしたらよいのか主体的に思考し、自分ができる範囲でその改善に向けアクションを起こせるよう、常にアンテナを張っていきたいと思います。

 

(写真)髙松夢香さんと提供。通訳業務にあたる髙松夢香さんとインド人親子の様子。

【報告】神戸市長田区のイベントに参加した子どもたちの作品

神戸市長田区でのイベント「異文化交流会」に参加頂いた子どもたちに、ヒンディー語で浦河町への寄せ書きにご協力頂きました!皆さん、ヒンディー語もイラストもとっても上手!こちらの作品は浦河町役場にお届けいたしました。

ヒンディー語講師を務め、こちらの寄せ書きを企画頂いたアンドリューさん、ありがとうございました!

 

報告者:Okuno

【報告】第3回 日本人調教師と兵庫県立西脇馬事公苑見学

 2023年10月10日に競走馬を預かる調教師さんの職場を訪問した。この調教師さんは数名のインド人厩務員を雇用しておられるとのこと。どのような経緯で、インド人を採用することになったのかをインタビューしてきた。競馬業界という非常に守秘性の高い世界で活躍するインド人の様子について、ここまで詳細に教えて頂き、今後の日本社会における外国人労働者の在り方について、深く考えさせられました。

 

インド人厩務員の雇用までの経緯

 数年前から希望にあう厩務員がなかなか見つからなかったため、外国人採用を考えるようになった。個人で厩務員を招聘、雇用しようと思っていたが、万が一、期待した業務をこなせない場合に帰国を促すなど、対応が難しいと感じたため、 それまでにあったエージェントに依頼するという方向へ移った(業務内容に不満があった時に、率直に伝えやすい)。

 

外国人厩務員の採用について(受入れ状況など)

  外国人の採用はやむを得ないことだと感じているが、国をはじめとする行政も、多くの調教師も消極的であり、批判的な意見を持っていることも。ただ、今回インド人を雇っている調教師さんは、いずれ外国人厩務員を雇わなくてはならないだろうと考えており、あえて外国人厩務員を雇っていくことにしたそうだ。

 外国人厩務員の統制をとるには、調教師と競馬場の指導が適切でなければならない。その点では、この調教師さんが所属している競馬場はかなり統制が取れている。今後のことを考えると、調教師同士の情報公開 や 外国人 厩務員の育成 協力が必要となるが、調教師が本来は個人事業主、時にはライバルとなる関係なので、相互協力が難しい関係にある。

  厩務員を雇う際には、エージェントから提出された資料のほか、①調教師会 ②厩務員会 ③競馬場 の3つの面接を通過しなければならず1か月を要する。 雇用する外国人は出身国で犯罪を犯していないか等、雇い主である調教師に難色を示す問い合わせが来ることもある。調教師としては外国人候補者の身元を警察のように調査することもできないので、適正なビザ発給がされていること(日本国として入国の審査が通っている)等、他の機関による審査・協力をもって信頼がおけると判断するしかない。

 今後も外国人厩務員の需要は増えていくと思われるが、調教師は管理してる厩舎や馬のキャパシティに合わせているため、個人で急に外国人厩務員を増やすことはできない。

 

雇用状況について

  雇用契約は1年契約に設定し、問題がなければ自動更新にしている、この契約内容や就業規則についても調教師が準備している。 今のところ契約打ち切りになるような問題は起きていない。

 当初、外国人を厩務員として採用することに反対していた人も、日々の仕事ぶりや、挨拶を通して「外国人でもできるな」という印象をもつようになったそうだ。 なかには、外国人と接するのが初めてという調教師・厩務員もいる。そのような環境で、必要最低限のコミュニケーションや、真面目な仕事ぶりは日本人以上に気を付けるよう指導しているとのこと。

 

日頃のコミュニケーションなど

  コミュニケーションは英語でとっている。日本語ができなくても、簡単な英語や指示内容を身振り手振り、やってみせることでつたわるし、多少日本語ができるインド人が日本語ができないインド人に教えるので、ゆっくりではあるが日本語をまなびつつ、仕事もこなすようになっている。

 困ったことはとくにはないが、 強いて言えば家族をつれていきている厩務員がいるのだが、妻である女性が全く出歩いたりできないのが気になっている。

 インド人の子どもたちについて、普通の公立学校に子供は通っているが、1年目は国から。2~3年目は市町村のサポートが受けられる。 日本語に関しては子供の方が早く習得している。

 

 

インド人厩務員へのインタビュー

 この厩舎にいる全員がジョドプール近郊から来ているマールワーリー。マールワーリー馬を飼育していたわけではなく、インドにある競馬場にて勤務していた。マールワーリー馬は主に曲芸や、マールワーリー馬だけの競争をやっている。その仕事には従事していない。インドにはハイデラバード、デリー、プネー、チェンナイ、ムンバイなど、いたるところに競馬場があり、そこで働いていた。インドで働いているときも、基本的には単身赴任で、業務に一区切りつけば実家に戻って休暇を過ごす…というスタイルだった。

 仕事の内容は日本とインドでもあまり変わらないが、 少し日本の方が業務量が多い。具体的な例としては、インドでは出走前にグルーミングをするだけだが、日本では出走後も含め頻繁にグルーミングをする。

 メンバーの中には、インドで騎手をしていた者もいるし、厩務員の経験しかないものもいる。フランスなど、他の国の騎手は日本でも騎手ができることもあるが、インドからはできない。もし、騎手になれるなら、もちろんやってみたい。

  私は元々、北海道浦河町で仕事をしていたが、寒さが堪えたので転職した。寒いことがつらかった。今のところ、ここで長く務めたいと考えている。

 

インタビュー後に感じたこと

 急にインド人厩務員が海外へ赴任しているわけではなく、日本が赴任先に加わったことがきっかけになって、インド人調教師や厩務員が増えたようだ。どのようにしてエージェントが日本の需要に気づいたのかは今後調査したい。

 国や都道府県としては、「実は」外国人厩務員採用については消極的で、効率的な受け入れ体制ではないことが判明した。しかし、今後は調教師個人の努力に頼るのではなく、全国の競馬場やと官公庁が、外国人従業員の採用にあたっての規則や支援を手厚くしていく段階にきていると考える。

 各地の多文化共生と共通する境遇もあるが、厩舎という閉じた世界ならではの苦労もあるかもしれない(一旦仲良くなれば、非常に良い環境になるかも)。また、帯同家族に関する悩みは浦河町のインド人厩務員と全く同じで、かなり印象が残った。

 

報告者:Okuno

 

第3回:日本人調教師と兵庫県立西脇馬事公苑見学

・厩務員の仕事とは

・外国人厩務員とのコミュニケーションについて

・馬産地調教施設と競走馬調教施設との違い

開催日時:10月10日(火) 14:00-16:00(予定) 

集合場所:JR西脇市駅

この度、北海道浦河町にご協力を頂いて、交流会を重ねてまいりました。

同じく兵庫にも、インド人厩務員・調教師が活躍しているという兵庫県立西脇馬事公苑を訪問する機会をもうけました。

通常は立ち入り禁止の施設とのことで、この機会に是非、どのような仕事をなさっているか学んでみませんか?

 

【報告】第2回 北海道 浦河町の魅力 ~町役場職員が語る観光・移住~

実は北海道体験移住の「パイオニア」

 

浦河町は、北海道でも早い時期から体験移住プログラムやサポート体制を設立している。団塊の世代の退職に合わせ、先んじて取り組んでいたそうだ。2022年度の北海道内の利用者実績は、知名度の高さと比例してか1位が釧路市だが、浦河町も堂々第3位で100名近くの利用者がいた。これまで約100世帯およそ80名が体験移住を通して、実際に浦河町に移住している。

 

北海道の湘南地方「浦河町」

 

浦河町の面積は、694.26平方キロメートルで、東京23区よりも広いくらい。主に、海岸沿いに住宅地が集中しており、内陸部は国有林で、町面積の8割る占める。 北海道の町といえども、海洋性気候の恩恵で冬は暖かいのだぞう。雪が積もったとしても、一晩で15㎝ほど。一番積もり積もっても25cmまでとのことで、ササっと雪かきをすれば、十分生活できる程度なのだそう。夏も涼しく、30度を超えることはめったにないそうだ。そんなことから、北海道の湘南地方と呼ばれているらしい。そういった点でも、北海道への移住を検討される方にとっても、「トライしやすい」町である。

 

20日後には住める浦河町のマイホーム(仮)

 

移住体験住宅もオンラインで簡単に予約状況が確認でき、申し込みも可能。住宅に職員住宅等の空き家を活用した「町営体験住宅」と一般の方の空き家をリフォームした「民間体験住宅」の二種類があり、使用料も異なる。

 

食器や鍋などは備付だが、布団だけはレンタルや持ち込みになる。「ただいまー」と、予約した住宅に一歩踏み込めば、そこから浦河町生活がスタートするというなんとも便利で気軽なシステムだ。自治体によっては、この体験移住は1世帯1回に限定している場合もあるが、浦河町は無制限。期間も1週間から最長1年間と自由自在。ひとによっては、「別荘」代わりに毎年利用されている方もおられるそう。それでも浦河町はウェルカムなのだそう。

 

地元の方との交流会や、地元の人や先輩移住者ボランティア「うらかわ暮らし案内人」の方が移住についての相談にも応じてくれる。滞在期間中の輪―ケーションの場所の提供や、子どもの就学についてもアレンジしてくれるそうだ。ここまで暮らしのサポートが万全なら、移住への一歩も踏み出しやすい。

 

北海道のラストフロンティア浦河町

 

北海道外からの移住者へのサポート体制があって、今回のインド人居住者へのサポートに繋がっているのではないだろうか。コミュニケーションの壁はあれど、生活するうえで困ることは自ずと似通ってくるものだ。浦河町の新しい町民への寄り添う姿勢は、まさに「オーダーメイド」のサポート体制。今後、各地で直面するであろう多文化共生への大きなヒントであるように感じる。

 

浦河町の産業:競走馬の育成

 

浦河町といえば、サラブレッド!馬を扱う牧場が浦河町には200カ所ほどあり、毎年1500~1800頭のサラブレッドが誕生している。親子すべてを合せると約4000頭のサラブレッドが浦河町に常時いることになる。日本のサラブレッド年間生産頭数が約7500頭なので、2割が浦河町産。浦河町を含めた日高地域で9割を占めるほど。まさに、浦河町は競走馬のふるさとである。

 

ただ、サラブレッド産業は景気の影響をかなりうけるため、それでもバブル時代に牧場が400~500カ所あったと期に比べて半減している状況だ。なにせ、サラブレッドの馬は1頭で1億円を超えることもあるほど高値なのだそう。それでも、新型コロナウィルスの影響を受けることもなく、2022年度の市場販売価格は約38億円に達するほどだ。

 

日本中央競馬会(JRA)の育成牧場は日本に2カ所ある。ひとつが宮崎県宮崎市。そして、もうひとつが北海道浦河町だ。しかも、浦河町の日高育成牧場は東洋一の広さがあり、敷地面積は約15万平米、なんと東京都渋谷区と同等の広さを誇る。ここで2歳程度まで競走馬としてのトレーニングを積むそうだ。

 

まさに、馬とともに歩む町。「5000人町民乗馬」というスローガンのもと、町民は小さい頃から馬に親しむ機会があり、春と秋に1500円で1週間の乗馬トレーニングを受けられるという。町民の乗馬サークルや馬術大会、馬フェスタなども開催され、日頃から馬に親しめる機会がある。

 

町民だけでなく、誰でも馬に親しめる施設 うらかわ優駿ビレッジAERU(アエル)がある。日本中央競馬会と浦河町の両者で管理しており、リゾートホテルとして利用することもできる。ここで、乗馬体験はもちろん日高山地を楽しめるカヌーや登山もできる。

 

浦河町の馬は1頭1億円?!

 

馬との距離が近い浦河町だが、むやみやたらに触って良いわけではない。浦河町の馬は、いわゆるふれあいパークにいるような馬ではなく、競走馬で大変なお金を投資し、育てられている馬だ。ディープインパクトのような名馬の種付けだけ2000万円。1頭1億円の価値を下らない馬たちなのだ。

 

馬が好き!競馬で活躍した馬に会いたい!という気持ちは良いのだが、だからといって、馬にストレスを与えたり、よもや記念にとたてがみを切ってしまうなんて、もってのほか。動物に危害を加えることになるため、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処されます。それだけではなく、人と馬の共存を目指す浦河町や町民の皆さん、馬主さんの信頼を大きく損なうことになるので、絶対にやめましょう。

 

競走馬のたてがみを切って「器物損壊罪」で逮捕 |Authense法律事務所

牧場で育てている競走馬のたてがみを刃物で切ったことを理由に、警察が、女性を逮捕したというニュースが報じられました。

それでも競走馬にお近づきになりたい…という方にはひだかサラブレッドタクシーがおすすめです。馬に関する9つの施設を巡ることができます。

 

浦河町の産業:海の幸と山の幸

 

北海道といえばサケ!鮭!浦河町でも鮭を楽しむとかできる。一般の方が川や河口付近で鮭を捕ることは禁じられているが、海岸で秋鮭を捕るのはOK。釣竿を立てかけておくと、鮭がかかり、家でイクラづくりが楽しめる。作った翌朝の新鮮なイクラがとっても美味。

 

北海道といえば、昆布も有名だが、浦河町でももちろん有名。三石昆布がとれるのだが、三石昆布のなかでも日高地域で撮れる「日高昆布」の名前で有名かもしれない。天日干しでカリカリに乾燥させるため、北海道産の昆布の中でも特上ランクの昆布と称されている。

 

野菜や果物では、アスパラガスといちごが有名。北海道の湘南地区なので、北海道の中でも一足先に「春アスパラ」を出荷している。また、涼夏の気候を活かして、「夏いちご」も出荷しており、毎年7月15日を夏いちごの日として、イベントなどが開催されている。

 

浦河町には肉牛農家も40軒ほどあり、多くは繁殖経営で肥育農家は数軒にとどまる。しかしながら、浦河町の牧草は、いわばサラブレッドが食む草とおなじ。海風にさらされ日高山地のベースからなるミネラルと栄養満点の草を牛たちも食している。そのため、牛肉も非常においしかった。

 

 

報告者:Okuno

【報告】第1回 浦河町の多文化共生の取組 ~地域おこし協力隊員が語る居住者サポート~

今回のイベント企画に至った理由

 

今年から北海道浦河町役場の方々にお願いをして、インド人居住者について学ぶ機会を設けた。

 

ちょうど私が浦河町の町長さんにおはなしをうかがったのが、浦河町のインド人居住者が100名に迫る2017年頃。今では300名近くのインド人が浦河町に住んでいるとのことで、いよいよ浦河町の力になれることはないかと、考え始めた。

 

まずは、地元神戸インド人を含め、多くの方に浦河町の実態を知って頂こうと公益財団法人 兵庫県国際交流協会に神戸市と浦河町の交流に関する企画を提出したところ、「是非、多くの方に知って頂く機会にしてください」とのことで、ご支援を頂くことになった。

 

浦河町はリトルインディア 西葛西よりもインド人比率が高い!

 

現在、浦河町の軽種馬農家は160戸(令和2年2月1日付)。中央競馬で走る馬の8割は日高産地で、浦河町内には3,000頭が育てられている。さすがに、人よりも馬が多い…という状況ではないが、それでも浦河町の人口は約1万人なので、やはり馬が多い環境であることは間違いない。その浦河町民約1万人のうち、外国人は約400名(令和5年3月付)で人口の約3.6%(28名に1名)を占めている。この外国人比率は、北海道の大都市、札幌市よりも多い比率になる。その外国人のうち、インド人が約300名(2022年時点:283名)なので、浦河町総人口の約3%をインド人が占めていることとなり、実は、最新のリトルインディアと名高い西葛西よりも、インド人比率はずっと高い。

 

そのインド人居住者の増え方も爆発的だ。約10年前の2014年は、インド人は0名だった。それが、3年後の2017年には100名になり、さらに3年後の2020年には200名を超えている。3年毎に100名ずつ増えている状況だ。

 

浦河町のインド人は何者か?

 

では、このインド人は一体「何者」なのか。在留資格別にみると、町内在住の外国人のうち77%が技能ビザ。12%が家族滞在ビザで日本で暮らしている。インド人居住者も多分に漏れず、この技能ビザで浦河町へ渡ってきている。彼らは、馬の調教・飼育の経験が10年以上あるプロ集団だ。

 

冒頭説明した通り、浦河町は、軽種馬産業の町である。しかしながら、最近は騎乗員や牧場作業等に従事する人が不足し、人材確保のため外国人労働者を受け入れたところ、インド人が採用された…というわけだ。インド人にとっても、インド本国での1年分の給与が、日本の1か月分の給与に相当するとのことで、雇用者・被雇用者にとってもWin-Winという状況にある。

 

一方、意図的にインドから人を呼び寄せたわけではないため、浦河町は対応に追われているところもある。技能ビザ取得者は、その経験を活かすことを最優先としているため、日本語ができなくても発給される。したがって、日本語はおろか、英語すらままならないインド人も浦河町へやってくる。そういった点でも、2000年問題で大量に西葛西にやってきたインド人ITエンジニアとは状況がかなり異なることがわかるだろう。

 

さらに、1~5年で帰国することが多い技能ビザ取得者だが、技能ビザは家族帯同が可能であるため、家族を浦河町に呼び寄せたところ、その住みやすさや医療環境の良さから移住をのぞむインド人も増えてきているとのこと。

 

なかには、浦河町で出産を迎えるインド人妊婦者もあらわれ、ヒンディー語の母子手帳まで準備されている。2023年6月時点でも5名のインド人妊婦がいる。いわば、家族帯同でやってきたインド人女性は、さらにコミュニケーションが難しくなる。理解できる言語は、ヒンディー語やマールワーリー語が中心となってくる。そうなると、日常生活を送るにあたっても、色々と不安やストレスが重なり、家に閉じこもりがちになるのが気になっているとのことだった。そこで、地域住民との橋渡しを担っているのが浦河町地域おこし協力隊である。

 

浦河町役場が外国人居住者を全面的に支援

 

2021年に外国人支援調査事業を委託にて浦河町で実施し、2023年現在は地域おこし協力隊の方が引き継いで支援を進めておられます。ここでは、地域おこし協力隊の方に、支援を通して感じたことをお話しいただきました。

 

超えろ!言葉の壁

 

言葉の問題は、終始登場する。インド人居住者から、地域おこし協力隊員への相談件数は月100~300件にも及ぶ。通訳依頼などの問い合わせは、主に携帯アプリのWhattsAppで要請が入る。その相談の半数以上は行政に関する問い合わせ。つづいて生活に関する問い合わせ(銀行口座開設など)が1割、医療健康が1割。子どもの教育、書類の説明などとなっている。

 

浦河町役場の方が「行政は、町内すべての方に等しく情報を与える責任がある」と、語気を強めて語っていたのが、非常に印象的だった。

 

その浦河町の手厚い支援を受けて、現在では行政からの重要な情報などはヒンディー語で配信され、居住しているインド人にも日本語教室を開催するなど、日本語を学ぶ機会を提供している。

 

浦河町のヒンディー語の発信力には本当に驚くばかりだ。下記はすべてヒンディー語の翻訳・通訳がついて、インド人居住者が理解しやすいよう配慮されている。

  

しかし、浦河町役場の方は、これでもまだ十分ではないという。

今後は、下記のような施策を検討中とのことで、ますますインド人のみならず外国人にとって住みやすい浦河町へと発展を遂げる計画だ。

 

・セミナーの充実(事業者向けの在留資格制度や外国人雇用までの制度説明)

・ワークショップの充実(多文化共生、日本語教室の開催、交流イベント)

・役場庁舎内の看板をユニバーサルデザイン化(役場の案内板や各課の看板をヒンディー語を含めて多言語化)

 

また、定期的にヒンディー語と日本語を解する方向けのワーキングホリデーを実施しているので、興味のある方は是非参加してほしい。

 

ベジタリアンでも元気に過ごしてほしい - インド人女性を取り巻く環境

 

浦河町に住むインド人女性の70%がジョドプール近郊出身。車の運転経験もないため、どうしても家に閉じこもりがちになってしまうとのこと。そこで、地域おこし協力隊員が、ヒンディー語の広報誌を通じて町内イベントを案内したり、地元の方と一緒にインド調理教室を開催するなどして地域の方との交流を深める手助けをしている。

 

一方、非常に深刻な問題になっているのが健康面だ。浦河町に住むインド人居住者の多くがベジタリアンであり、インドで慣れ親しんだ野菜が日本では手に入らないため、栄養不足が散見されるという。インド人女性は貧血気味。インド人の子どもたちも、ビタミンD、カルシウム不足、貧血の傾向がみられる。

 

そこで、インド野菜を育てる試みをしたところ、ユウガオ、ホーリーバジルは育ったが、それでも十分といえる量・種類ではないため、インドで食していた野菜を沖縄から野菜を共同購入している状況だという。今後は、できるだけ浦河町で野菜を育て、それを使っての料理を浦河町の特産品として広めることも視野に入れて取り組んでいるとのことだった。

 

浦河町のベジタリアン研究会にも出来上がったお料理を味見してもらうなど、交流を深めているとのことだった。

 

子どもたちと教育

 

2023年現在、5名のインド人のこどもが地元の幼稚園に。1名のインド人のこどもが地元の小学校に通っている。他、待機児童や未就学児童は、解放されている保育園や公園で遊び、学んでいるとのことだった。その際、母親も孤独な子育てにならないよう、外に出て交流できるよう配慮されている。

 

ただ、インド人の両親からはインドに帰国した際のことも考えて、英語やインドの文化も知ってもらいたいという要望もあり、今後は英語教室などを開講することも検討しているという。

 

 

まとめ

 

日本のリトルインディアとして有名な場所は、最も歴史が深い横浜にはじまり、神戸、そして、西葛西だろうが、今はそこに浦河町が加わりつつある。

しかも、リトルインディア浦河町は、これまでのリトルインディアとは全く状況が異なっていることがお分かりになったであろう。

 

・町の総人口の約3%がインド人(人数は少ないが、出会う確率は多い)

・馬の調教師・厩務員という特殊な職業に従事している

・ヒンディー語・マールワーリー語しか理解できないインド人が多い

・彼らはインドのラージプート軍馬を世話していた末裔!?

 

浦河町のインド人調教師・厩務員は需要も高く、現在は全国各地の牧場や馬事公苑で従事している。身近な競馬場で走る馬も、インド人が一生懸命育てた馬かもしれない。

 

地方競馬情報サイトから、近くの競馬場に浦河町産の競走馬がいるかも検索できる。

 

 

報告者:Okuno

北海道 浦河町とのインド交流会

~ 日本最古のリトルインディア神戸市&急成長のリトルインディア浦河町 ~

 

インド人居住者が急増した浦河町を知って、多文化共生について考えてみませんか?

オンライントーク(各約90分・参加無料 

・第1回

浦河町の多文化共生の取組 ~地域おこし協力隊員が語る居住者サポート~

日時:6月25日(日) 10:00~11:30

内容:インド人居住者をヒンディー語で支える協力隊員におはなしをうかがいます!

 

こんな方におすすめ…

・ヒンディー語等を学ばれている方 ・日本にいながらインドを体験したい方 ・地域おこし協力隊を知りたい方 ・市役所など官公庁への就職希望の方 ・外国人技能者の実例を知りたい方 ・馬が好きな方 

 

・第2回

北海道 浦河町の魅力 ~町役場職員が語る観光・移住~

日時: 8月6日(日) 10:00~11:30

内容:観光先にも移住先にもおすすめ!浦河町の魅力を存分にご紹介します!

こんな方におすすめ…

・自然や動物が好きな方 ・「移住体験」「移住」をご検討中の方 ・観光の穴場、旅行先を探している方 ・映えスポットを探している方 ・北海道は好きだけど寒いのが苦手な方 ・いちごが好きな方

主催: 関西日印文化協会 CN:奥埜 梨恵

協力: 在大阪・神戸インド総領事館、北海道 浦河町、浦河日印友好協会、分散システム技研合同会社

支援: 公益財団法人兵庫県国際協力会

 

Study Seminars of Indian Society with Urakawa, Hokkaido
~ KOBE:The Oldest ‘Little India’ & URAKAWEA:The Developping ‘Little India’ ~

Online Talk from Urakawa (Each 90mins・FREE) ※Easy Japanese

 

*1st: Support for Multicultural Symbiosis Society

~A Community-Reactivating  Cooperator’s Report on Indian Residents~

Time&Date: 25, June (Sun) 10:00 - 11:30

Contents:  A Hindi Speaking Cooperator talks how to support Indian residents.

・Hindi/Marwali/Japanese speakers ・To Feel like you stay India in Japan ・To Know community-Reactivating Cooperators System ・Horse & Animal lovers ・To Know the situation of horse keeper ・To Know town halls work for foreigners

*2nd: Attractive Town:Urakawa

~Tourism and Stay talked by Town Hall Staffs~

Time&Date: 6, August (Sun) 10:00 - 11:30

 Contents:  Urakawa is a great place to visit and stay. Let’s know attractive points!

・Nature & Animal lovers ・To Do trial / real transportation in Japan ・To Find secret tourism in Japan ・To Find instagenic place in Japna ・To Visit Hokkaido without extreme cold ・Strawberry lovers

Organizer:Kansai Japan India Cultural Society CN: Rie Okuno

Supporters:The Consulate General of India,Osaka-Kobe, Urakawa Hokkaido, Distributed System Giken, Urakawa Japan-India Friend-ship Association

Sponsor:Hyogo International Association

浦河町とのインド交流会/Study Seminars with Urakawa

インド共和国第75回独立記念特集号

2021年11月発刊

※本サイトでお読みいただけます!

トピックス

このたび、当協会会長の
溝上 富夫氏(大阪外国語大学名誉教授)が、瑞宝中綬章を受章されました。 2022年4月付

Twitter